文学部横断型人文学プログラム

学びの特徴
-文学部 現代とクラシックスのクロスオーバー-

哲学演習 ⅡA(倫理)
[2019年度開講科目]

〈上智の探求(philosophia)〉
への対話的学び

哲学科 長町裕司 教授

2年次生必修のコース別(哲学思想、倫理学、芸術文化)ゼミナール

 学生それぞれが自らの問いを自覚し真剣に問い究めようとする発端が開かれることが何よりも大切な哲学科での学びは、2年次生から三つのコースに重点化した系列選択が設けられています。各コース別に必修の体系的科目とともにゼミナールが開設され、毎年度それぞれのコースに適格なテキストを担当教員が選定し、20名前後のクラスを編成します。毎回、最初に2、3名がテキストの担当範囲をレポートして発表を行い、ディスカッションポイントを幾つか提示して、演習参加学生が小グループに分かれてたっぷりと議論し話し合う時間をとります。

 その後、各小グループで討議した内容から要点を提示し合い、このようにしてテキストから開かれる哲学的問題への学生たちの理解が開拓され、共有化も可能となったところで、教員がコメントを述べ、さらなる問いかけや方向づけを提起します。時間一杯まで質疑や討論が行われ、レポーターたちがよく準備した回には盛り上がって白熱教室となります。

自らの思考を対話的に錬成する

 系列選択の下での関心を深めてテキストの読解力を発展させるとともに、対話的に教師も他の学生たちも仲間として共に吟味し討論する精神的姿勢を培うことが学びの目的の第一に挙げられます。根本的な問いに目覚めて、哲学的な思考がどのような道筋で開かれてゆくのかを身をもって体得するために、繰り返し磨きをかけてゆくことが毎週の学びの課題です。そして自分の考えをしっかりとした根拠を示しながら明瞭に他者に伝え、他者からの別の観点の呈示や反論に応答できる能力を発展させます。

 レポート作成には、学期を通じて培われた問題意識と哲学的な思考力からの問題の解きほぐしを十分に表明できることが求められます。このような学びから、社会人となってからも、自分の考える内容を秩序正しく筋道を通して表現できる人物を育むことになると確信できます。

高校生へのメッセージ

 大学での学びと自己のあらゆる面での発展は、各々の人生全体にとってかけがえのない意味をもつものとなり得るはずです。大学での勉学は、決して社会に適用できるための準備や技能・知識の獲得といった実用面にあるのではなく、自らの〈道〉を開拓し固有な人格形成の発展に資するものでなければなりません。哲学科での学びは、学生それぞれが自らの問いを自覚し真剣に問い究めようとする発端が開かれることによって、本物となると言えるでしょう。そのために2500年にも及ぶ哲学史において問われた根本問題、また様々な思考の格闘から成る諸哲学文献に意欲的に挑んでゆくことが求められ、その厚みある土壌に養われて問題意識が開墾されてゆくことが大切です。

 哲学の歴史的伝統と現在共に生きて共に考える仲間 ― この両方位へと開かれた共同的探求は、哲学する営みの魅力に他なりません。哲学科の学生たちの多くが人生の若い青年期に哲学の学びを体験して「ほんとによかった」という確信を抱いて卒業してゆきます。現高校生の諸君も、志のある人は是非挑戦してみて下さい。

※本ページは2019年度開講時の情報にもとづいています。